童話×水彩画「海辺のラジオ」を描きました。夏の夕暮れの静かな感じをイメージしています。
童話×水彩画「海辺のラジオ」
「海辺のラジオ」SumiyoⒸ2019
「海辺のラジオ」文 Sumiyo
海水浴客が帰ってしまうと
砂浜は急に静かになりました
海の家では店員さんが
コーラの空き瓶を
外へ運び出しています
夕暮れのこの時間
きまって
砂浜のどこからか
ラジオが聴こえてきます
まいにち
ほんの5分ほどでしょうか
店員さんは
ある日、
温度が下がった砂の上を
ラジオが聴こえてくる方向へ
歩いてみました
誰かが置き忘れたのか
砂の上に
ラジオがありました
そのまわりに
蟹やうみがめ、イカなど
海のいきものたちが
集まって聴いています
どうやら
お気に入りの番組があるようです
きっかり5分たち
番組が終わると
スイッチを切って
満足そうに
ぞろぞろおうちへ
帰って行きました
「南南東の風、風速2メートル」
「波の高さは、1.5メートル」
みんなが聴いていたのは
天気予報でした
海のいきものたちも
お天気は
やっぱり気になるんですね
明日の予報は
「曇りときどき雨」
ラジオが消えて
砂浜は
再び波音だけになりました
店員さんは
ラジオが濡れないよう
店にあったちいさなパラソルを
さしかけました。
それから
減っていたラジオの電池を
入れかえると
水平線にようやく
薄紫の夜がきました
おわり
SumiyoⒸ2019
午前3時の天気予報
NHKラジオをつけっぱなしにして
絵を描いていると、
午前3時頃、
急に、
淡々と天気予報がはじまります。
男性アナが
音楽もなにもなく
ただひたすらに
静かに
全国の
天気予報と風向き、波の高さを
読み上げます。
テレビのワイドショーや
ニュースなどで
中途半端なアイドル演出の
お天気おねえさん、
お天気おにいさん、
女子アナに
ややゲンナリしていたので
新鮮でした。
もし
海辺のいきものたちが
明日の風向きや波の高さを
淡々と聞いて、
知ったら安心だろうなあ・・・
と考えてできたおはなしです。
ウミガメの顔がリアルに描くと
かわいくなかったので
やさしく描くのに
努力しました。