童話「100番目のりんご」に挿絵を描きました

以前書いた童話「100番目のりんご」をブラッシュアップして、さらに水彩画の挿絵を描きました

童話「100番目のりんご」に水彩画で挿絵を描きました

「100番目のりんご」挿絵
SumiyoⒸ2021

童話「100番目のりんご」 作 Sumiyo

ずうっとむこうまで細い木が並んで立ち、もさもさと葉っぱが繁っているので農園は空気まで深緑色に見えました。

緑色の空間には赤い水玉模様が、ぽん、ぽぽぽん、と浮かんでいます。それは、みずみずしく実ったりんごでした。

「このへんの農園のなかで1番のりんごを育てたぞ」
青年が腕まくりをすると筋肉に太陽があたってブロンズ色につやつや光りました。
ここは青年のりんご園です。はじめて育てたりんごをひとつひとつ収穫しているところ。

「誰にも負けないりんごを、だ」
青年が力強くつぶやくと、ひとつのりんごが枝先で静かに言いました。
「ここらあたりで1番のりんごを作るのは昔から隣のおじいさんだよ。きみが1番になったらおじいさんは2番になっちゃうじゃないか?」

青年は、はっとしました。
たしかにそうだ。隣のおじいさんは、りんごの作り方をいちから教えてくれた大切な先生です。
青年はなっとくしてうなずきました。
「じゃ、2番目のりんごでいいや」
そう言って目をきらきらさせました。
すると、りすがりんごの木の枝を勢いよく登ってきて言いました。
「2番はおじいさんの隣の家のおじさんのりんごじゃないか」
そうだった・・・
隣の隣のおじさんには台風の時、りんごが落ちないよう助けてもらったな・・・
青年は思いだしました。そして、はあとため息をついて
「じゃ、3番目のりんごで…」
と、言いかけたものの、3番は3番でいるものです。

次々に順位を下げていくことになったので青年はだんだんガッカリしてきて、
草の上にどっかり座ると、
「おれ、100番目のりんごでいいや」
と、投げやりに言いました。

・・・でも、100番目のりんごなんてだれも欲しがらないよなあ。

青年は、なんだか力が抜けて地面にゴロンと寝転びました。秋風が枯草のよい匂いを連れて青年の鼻先を通り抜けます。

そこへ、青年にとって先生である1番のりんごを作るおじいさんが使い古してあちこちよれた麦藁帽子をかぶってやってきました。
青年は飛び起きて立ち上がり、先生にあいさつしました。

おじいさん先生は収穫したばかりの青年のりんごのできぐあいを見にこられたのです。

「ひとつ食べていいかね?」

おじいさん先生はカゴに積みあがったてっぺんの、つるつる美しく輝くりんごを手に取ると、さくりとかじりました。

上品な甘い香りが広がり、
おじいさん先生は満足そうに白い眉を下げ、目を細くして青年に質問しました。
「よくこんなに甘くできたもんだ。コツはなんだい?」

青年は小さな声で
・・・演奏会です、と答えました。

週に一度、りんご園の真ん中で趣味のアコーディオンをりんごたちに披露するのです。音楽を聞かせた植物はよく育つという話を前にどこかで聞いたからでした。上手に披露するために青年はまいにち一生懸命アコーディオンの練習をしています。

りすも音楽が聞こえると一緒に枝をたたいてリズムをとっていましたので青年の努力は、りすもりんごたちもよく知っています。おじいさん先生は言いました。

「なるほど。それで、このあたりの誰のりんごの味とも似ていないとくべつ甘いりんごになったのか。こりゃあ、たいしたもんだ。これからは、おまえのりんごの出番かもなあ」
と、ほめてくれました。

恥ずかしそうに微笑む青年の横顔を見て、りすもうれしくなり、ほっぺをほんわり赤くしてりんごにささやきました。
「1番でも2番でも100番でもなくて、『出番』だってさ」
おわり
SumiyoⒸ2021

まいにち修正

かつて小説、脚本、童話など
いろんな作品を
コンクールに出していた時期がある。

5枚の童話のときもあれば
60枚の脚本のときもあり、
300枚の小説のときもある。

いつも提出直前まで徹夜で推敲して
梱包して郵便局へ出したのに
それでも修正箇所がでてくる。

東京で住んでいた家は
徒歩30秒のところに郵便局が
あって
原稿を出して家に帰ったのに
またすぐ戻って返してもらい
ホワイトで修正して梱包してまた出して、
を繰り返す
へんなひとだった。

そんなこんなで
コンクールの消印有効締切日は
いつもへとへとになる。

しかしそれが何年か続くと
郵便局のひとたちと顔見知りになり、
相手もだんだん慣れてきて
なんとなく応援してくれているような
雰囲気があった。

「やっばり書き間違いがある。返してくれ」
というと簡易書留の「原稿在中」の封筒をすぐ
探してくれた。

ここしばらくはコンクールにだしてない。

ブログやSNSで発表すれば
提出後に訂正箇所に気づいて
悶々と悩むということがない。

修正し放題だから気がラクだ。
つまり毎日微妙に修正することができる。

文章は絶対に修正したほうがよくなる。
美しくなる。
それは間違いない。

ただしネットにアップしてしまうと
コンクールには出せないけど。

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