一枚絵本「よるのこうえん」を水彩画で描きました。人間が誰もこなくなった川べりの公園は朝と昼のことをすっかり忘れてしまいました。公園はいつ思い出すのでしょうか。
一枚絵本「よるのこうえん」水彩画
「よるのこうえん」SumiyoⒸ2020
よるのこうえん 文 Sumiyo
にんげんが
いつでも
きつきつに あつまって
いちねんじゅう
にぎやかだった
かわべりの
こうえんに
とつぜん
だれも こなくなりました
にんげんが こなくなると
よく はしっていた
じんりきしゃの
しゃりんの おとも
きこえません
しずかすぎる こうえんは
あさと ひるのことを
すっかり わすれて しまいました
あれから ずっと よるの ままです
やがて そこには
やまから どうぶつたちが きて
すむように なりました
のねずみが たのしそうに
くらしています
くまの きょうだいも
ときどき あそびに きます
かわを ながめながら
「しずかだね。にいちゃん」
ちいさい くまが いいました
「ほんとだね」
おおきい くまが いいました
しゃら しゃら しゃら
かわの ながれる おとだけが
あおい よるに ひびきます
しゃら しゃら しゃら
ちいさい くまは
かわに ききました
「にんげんが こなくなって
しずかに なって うれしい?」
かわは だまって
しゃら しゃら しゃらと
1000ねん まえと
おんなじ おとを たてました
ずっと よるの ままの
こうえんは でぐちの みえない
くらい とんねるの なか みたい
くまの きょうだいには
こころの とうめいな
にんげんの こどもの
おともだちが います
「また あいたいな」
「また あそびたいな」
くまの きょうだいは
つぶやきました
「こうえんが あさと ひるを
おもいだしたら また あそべるよね?」
ちいさい くまが おおきい くまに
ききました
すると
かわの ながれの まんなかに
くいの ように しんと たち
よかぜに ふかれていた しらさぎが
こたえました
「よるの つぎは あさ。それは
せかいの きまりだぞ。だから きっと
あさは くるのさ」
まだ
1ミリも うごかない
みかづきの したで
かわは だまって
しゃら しゃら しゃらと
ながれています
おわり
「よるのこうえん」SumiyoⒸ2020
だれもこなくなった公園
毎月2回は
散歩していた
大好きな
川べりの公園があります。
大きな橋があって
桜や夕陽や
紫陽花や紅葉や
雪景色がうつくしい場所です。
桜の終わりに
風が吹くと
あわててでかけて。
雪がふると
ながぐつをはいて
さくさくさくと
でかけます。
スケッチしたり
白鷺をながめたり。
でも いつしか
外国人観光客で
満員になり
東京の繁華街みたいな
お店ができて
あちこちで宴会をやっていて
近づきにくくなりました。
川の音や苔のにおいは
にぎやかな声と
飲み物のにおいで
かき消されてしまい、
だんだん足が遠のきました。
それが
今年の春、
とつぜん
誰も行かなくなりました。
いまも
ほとんど 人はいません。
でも
人が少ないからって
のんきに
でかけることも
むずかしい。
好きな時に
好きな場所に
のんびりと行ける
自由って
なんて
すばらしいのだろうと
いま、
こころから思います。
いつか
「よるのこうえん」が
朝と昼を思い出したら
西陣織みたいな
紅葉を観に行ってみたいと
思います。