童話と水彩画を描きました。タイトル「100番目の林檎」。〈りんご果樹園で短編童話「100番目の林檎」を読むひととき〉がテーマです。
童話×水彩画「100番目の林檎」
「100番目の林檎」SumiyoⒸ2019
「100番目の林檎」作 Sumiyo
「おれ、村で1番のりんごを育ててやるぞ」
陽に焼けた青年は
腕まくりをしました。
少し色が濃くなりはじめたりんごが枝先で
静かに言いました。
「この村で1番のりんごを作るのは
隣のじいさんだよ。
きみが1番になって
じいさんを2番にするのかい?」
たしかにそうでした。
青年にりんごの作り方を
いちから教えてくれた大切な恩人です。
「じゃ、おれ、この村で2番目のりんごを作る」
青年が力強くつぶやくと、
木のうろから小さなりすが顔を出して
「2番はじいさんの隣の家のおじさんのりんごじゃないか」
と言いました。
隣の隣のおじさんには去年の台風の時
りんごが落ちないよう助けてもらったな・・・と
青年は思いだしました。
「じゃ、3番目のりんごでいいか」
と弱弱しくつぶやいたものの、
3番は3番でいるものです。
次々に順位を下げていくことになったので
青年はだんだんめんどうになってきて
「おれ、100番目のりんごでいいや」
と言いました。
・・・でも、村で100番目のりんごなんて
だれも欲しがらないよなあ
青年は、やる気を失ってしまいました。
そこへ
村1番のりんごを作るおじいさんが
やってきて
すでに収穫してカゴに積まれていた
青年のつややかなりんごをひとつ手に取ると
かじりました。
さくり。
甘酸っぱい香りが広がります。
そして
「よくこんなに甘くできたもんだ。
コツはなんだい?」
と聞きました。
青年は、
毎日、毎日、丁寧に塵を払って
モーツァルトの音楽を聴かせたんだと
説明しました。
「誰の味とも似ていない、
甘いりんごの味になった。
こりゃ、たいしたもんだ。
これからは、おまえのりんごの出番だな」
と、ほめてくれました。
はにかんだ青年の横顔を見て
りんごとりすも
うれしそうに
頬をぽぽん、と赤くしました。
「1番でも100番でもなくて出番だってさ」
おわり
SumiyoⒸ2019
りすのふわふわを丁寧に描きました
こんにちは。
Sumiyoです。
ときどき秋の風が吹き、
赤とんぼも見かけるように
なりましたね。
秋らしい童話をひとつ、書いてみました。
絵はりすのふわふわ感を一生懸命描きました。
1番か2番か100番か。
というおはなしなんですが、
そういう順番は
本当はどうでもいいことなんじゃないか、
という気がしています。
順位がある、
ということは
何かの枠の中にいる、
ということで。
枠全体のレベルが低ければ
順位は上がるだろうし、
高ければ下がると思うし。
枠はどうあれ
自分が納得できるかどうか、
が判断基準でいいような。
そういう気分です。